熊本県多良木(たらぎ)町の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザ(H5型)が発生した問題で、県は16日午前、同県相良(さがら)村の関連養鶏場も含めて殺処分した鶏計11万2000羽の埋却と、鶏舎の消毒など家畜伝染病予防法に基づく防疫措置を完了した。
新たな発生などがなければ、両養鶏場から半径3キロ圏に設定された鶏と卵の移動制限区域は5月8日午前0時に解除される見通し。県は引き続き主要道での車両消毒などの防疫対策を徹底し、終息を目指す。
県によると、殺処分した鶏の死骸を養鶏場敷地内の穴に投入する作業は15日午前に終了。その後、鶏舎の消毒などを行い、多良木町の発生養鶏場は同日午後7時、相良村の関連養鶏場も16日午前7時半にそれぞれ防疫措置を完了した。
相良村の養鶏場付近では16日午前9時過ぎ、防疫作業を終えた防護服姿の県職員や自衛隊員らが拠点の多良木町民体育館に戻るため、バスに乗り込んだ。
多良木町民体育館では、作業から戻った県職員らが、疲れと安堵(あんど)が入り交じった表情を浮かべながら、保健師や医師らの問診を受けた。鶏舎の清掃や消毒に従事した佐藤優一さん(26)は「もうこれ以上は起きてほしくない」と願っていた。
1970年代までアスベスト(石綿)を入れた麻袋を再生していた堺市内の5工場について、労働者8人と周辺住民ら2人の計10人が中皮腫や肺がんなどで死亡し、労働者の家族計4人から石綿を吸った人に特有の「胸膜プラーク」の症状が見つかったことがわかった。
調査した「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」は、ほかにも周辺被害が広がっている可能性があるとして相談などを呼びかけている。
同会などによると、麻袋はかつてコーヒーや穀物以外に石綿の梱包(こんぽう)にも用いられた。使用済みの麻袋は再生業者が引き取って、いったん切断し、付着した石綿を落とした後、縫い合わせて再利用された。「工場の窓から粉じんが吹き出していた」との証言もあり、工場内外に大量の石綿が飛散した可能性があるという。
今回被害が明らかになったのは、同市堺区、中区、北区の4業者の計5工場。現在うち4工場はすでに閉鎖。残りの1工場は移転しており、石綿の使用もない。
死亡した労働者以外の2人をみると、堺区にあった工場のすぐ裏で生まれ育った女性は中皮腫を発症して、2009年に50歳で死亡。運送業者をしていた父親の車に同乗して堺区の別の工場に出入りしていた女性も中皮腫になり、10年に57歳で亡くなった。2人は石綿健康被害救済法の救済対象となっている。
また、胸膜プラーク患者の4人はいずれも家族が工場で働いていたという。
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5工場のうちの一つで、麻袋をリサイクルしていた業者の男性(68)によると、工場では、使用済みの袋を集じん機に装着して付着した石綿を取り除き、包装材などに再利用していた。作業中、ほこりがもうもうと立ちこめていたといい、男性自身も約20年前に胸膜プラークの手術を受けた。
男性は「国が石綿の危険性を早く知らせていれば、被害拡大を防げたのではないか。国の責任で補償すべきだ」と話した。
同会の調査では、堺市内には5工場以外に少なくとも六つの麻袋再生工場があったという。
全国的にも同様の工場が存在していたとみられ、NPO法人東京労働安全衛生センターによると、石綿の入った麻袋の再生作業をしていた工場は東京で2か所、埼玉で1か所確認されている。
このうち、東京都足立区の工場に勤務し、「石綿肺」を発症した埼玉県の男性ら2人が労災と認定。
ほかにも、再生された麻袋を使っていすの座面を作る都内の工場で働いていた男性1人も中皮腫を発症、労災認定されたという。
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会では、電話相談(06・6943・1527)を受け付けている。
国の健康調査市が要求へ
堺市は、環境省が兵庫県尼崎市などで実施中の「石綿の健康リスク調査」に堺市を加えるよう、同省に求める方針を決めた。堺市では「麻袋リサイクル業の被害がこれほどまでとは知らなかった。実態を把握する必要がある」としている。
調査はクボタ旧神崎工場(尼崎市)周辺で石綿被害が多発した問題を受けて2006年度に始まった。石綿を使用していた工場周辺に居住歴がある希望者を対象に、無料検診(年1回)を実施し、症状の変化などを検証する。
小規模な工場周辺の被害については、大阪市西成区でも、アスベストを使って保温剤などを製造していた工場周辺で少なくとも住民13人に、中皮腫などの石綿被害が判明。同省は、今年度に新しく大阪市をリスク調査の対象に加えた。大阪市内ではかつて100か所近くの石綿製品製造工場があったとみられている。
国は06年に石綿健康被害救済制度を創設。工場周辺の住民など労災保険の対象外の人について、救済給付や特別遺族給付金を支給している。
徳島県西部の美馬、三好両市と東みよし、つるぎ両町の小、中学生や大人の8割以上が野菜不足ということが、美馬、三好両保健所の「食の実態調査」でわかった。
両保健所などでつくる「にし阿波・こころとからだの健康づくり推進会議」は、今月から毎月24日を「にし阿波・野菜食べようデー」に指定。新たにのぼりを作るなどキャンペーンを展開し、野菜摂取量が増えるよう啓発活動に力を入れる。
調査は昨年5~7月、4市町の小学5年生(当時)と中学2年生(同)の計1326人、5年生の保護者、産直市の関係者ら1951人を対象にアンケート方式で実施。小・中学生の1093人、保護者ら1323人から回答があった。
1日平均の野菜摂取量は、小学生が199グラム、中学生が200グラムで、保護者らは242グラム。厚生労働省は1日の摂取目標として、小学生290グラム、中学生300グラム、大人350グラムを掲げており、全世代で100グラムほど少ない結果となった。
同会議関係者は、県全体の野菜摂取量は全国ワーストクラスにあるものの、両保健所管内には野菜の生産農家が多いことから「目標量はクリアしている」と考えていた。それだけに結果を重大に受け止め、対策を検討。まずは、毎月24日を「野菜食べようデー」とし、「1日 100グラムアップ!」などと書いたのぼりを200本作成。イベント開催時や産直市に立てて呼びかけることにした。また、管内の高校に通う生徒を「健康づくりサポーター」として登録し、学校の文化祭などのイベントで野菜摂取を呼びかけるなど、リーダー役を担ってもらうことを計画している。
美馬保健所の担当者は「予想以上に野菜の摂取量が少なかった。様々な方法で食生活の改善を働きかけていきたい」と話している。
農林水産省と熊本県は13日、同県多良木町の養鶏場で鶏が大量に死んでいるのが見つかり、県の遺伝子検査の結果、高病原性鳥インフルエンザ(H5型)が発生したと発表した。
県は、この養鶏場の5万6000羽と、経営者が同じ同県相良村の養鶏場の5万6000羽の計11万2000羽の殺処分を始めた。また、両養鶏場から半径3キロ以内を鶏や卵の移動を禁じる移動制限区域とした。
国の動物衛生研究所で確定検査を急いでいる。農水省によると、確定すれば、養鶏場での感染確認は2011年3月の千葉市以来、熊本県内の養鶏場では初めて。
県によると、多良木町の養鶏場では11日に70羽、12日に200羽が死んだ。12日に簡易検査を行ったところ、10羽のうち6羽が陽性で、遺伝子検査の結果、H5型であることを確認した。県は蒲島郁夫知事を本部長とする防疫対策本部を設置した。
両養鶏場から半径3キロ以内の移動制限区域では、5戸が計約4万3000羽の鶏を飼育。半径3~10キロ内(42戸計約39万8000羽)についても、区域外への持ち出しを制限する搬出制限区域とした。
農水省によると、国内では鶏肉や卵を食べて鳥インフルエンザがヒトに感染した事例の報告はないという。
県「ワクチン接種を」
全国的に患者が急増しているはしか(麻疹)について、和歌山県内でも今年に入ってから3年5か月ぶりに感染が報告され、患者数は幼児を中心に12人(10日現在)に上ることが、県のまとめでわかった。今後、流行する恐れもあり、県は注意を呼びかけている。
県健康推進課によると、県内では3月21日から今月9日までに、医療機関から和歌山市保健所に11人、岩出保健所に1人の感染が報告された。うち2人は予防接種を受けておらず、年齢層別でみると、2~5歳が8人と多かった。
県内の年間患者数は2008年の40人をピークに減っており、10年10月末以降は、確認されていなかった。
国立感染症研究所のまとめによると、全国で今年になって確認された患者数は3月30日までに231人。既に昨年1年間の水準に達している。
県などによると、はしかウイルスは空気感染し、感染力が強い。免疫のない人が感染すると、高熱や発疹の症状が出る。肺炎などの合併症が起きることもあり、1000人に1人の割合で脳炎が発症するという。
有効な予防方法は幼児期のワクチン接種で、同課の担当者は「自治体などから案内があれば、必ず子どもに受けさせてほしい」と呼びかけている。