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【ビジネスアイコラム】「ポチ」ではなく「番犬」が必要だ (2/2ページ)

バフェット氏が経営する米投資会社バークシャー・ハザウェイでは「番犬」の置かれた状況は180度異なる。

 同氏保有分を除くと、10年度に同社取締役11人は家族保有分も含め全員で30億ドル、1ドル=80円換算で2400億円の自社株を保有している。1人当たり200億円以上だ。一方、10人の社外取締役は1人当たり平均で3630ドル、1ドル=80円換算で30万円弱の報酬を得ているにすぎない。交通費を賄える程度の金額だ。

 バフェット氏はバークシャー株主向けに書く2010年度版「会長の手紙」の中で、「当社取締役はオーナー(株主)のように考え、行動します。経営悪化を招いたら、一般株主と同様に損する仕組みになっているからです」と書いている。

 他方、社外取締役は一般株主よりも経営陣に気に入ってもらえるように行動する-。これがオリンパスのガバナンス構造である。深刻なのは「番犬」よりも「ポチ」が主流のガバナンス構造は、日本企業全体にも見受けられる点だ。バフェット氏がこれまで日本企業に見向きもしなかったのもうなずける。(ジャーナリスト・牧野洋)

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【ビジネスアイコラム】「ポチ」ではなく「番犬」が必要だ (1/2ページ)

先月に初来日した米著名投資家、ウォーレン・バフェット氏は、これまで日本株に興味を示してこなかった。その一因は、日本企業のコーポレート・ガバナンス(企業統治)にあるかもしれない。

 というのも、バフェット氏が掲げる「社外取締役と一般株主の利害一致」という基準、いわゆるバフェット基準を満たす日本企業があまり存在しないからだ。バフェット基準では、社外取締役は一般株主の代理人として経営陣を監視するよう求められる。いわば「番犬」の役割を担うのだ。

 バフェット氏来日中、オリンパスの損失隠し問題が世界的に注目を集め、日本企業のガバナンス欠如が改めて議論されていた。オリンパスも、バフェット基準から大きく外れていたことはいうまでもない。

 オリンパスの「番犬」は、15人の取締役のうち社外出身の3人だ。だが、2011年3月期を見ると、3人のうち2人はオリンパス株を1株も保有せず、1人は700株保有しているにすぎない。

 それでありながら、社外取締役3人と社外監査役2人は合計で6600万円、1人当たり1320万円の報酬を得ている。平均的サラリーマン家庭の倍以上も稼いでいるわけだ。

 つまり、社外取締役2人はオリンパスが経営破綻し、持ち株が紙くず化してもまったく痛みを感じない。700株保有する社外取締役についても報酬水準と比べればオリンパス株の下落は無視できるほどだ。これだと社外取締役は一般株主の「番犬」というよりも経営者の「ポチ」になりかねない。「経営陣に気に入ってもらい、毎年1320万円をもらう」が何よりも重要になるからだ。

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菊川氏は「何でも乗る」ギャンブル好き オリンパス、財務が実権握り暴走 (2/2ページ)

財テクの損失は前任社長の時代に発生したが、菊川氏が手がけた情報関連会社「ITX」の買収で、21年3月期決算では約400億円の損失処理を迫られている。菊川社長時代のM&Aも、損失の穴埋めの対象となった可能性もあり、第三者委員会の調査対象となる見通しだ。

 高山社長は「(1990年代の)急速な円高で業績悪化に苦しんだ時期、多くの日本企業が財テクに走った。そのころから(損失隠しが)あった」としている。バブル崩壊後、多くの企業が、こうした損失を別会社や別の金融商品に付け替えて損失を隠す“飛ばし”に手を染めた。株式市場では疑惑が表面化した当初から、オリンパスも「飛ばし」が噂されてきた。

 株式市場関係者は「他の多くの企業は、どこかの段階で損失を表に出し、処理を行ってきた。ここまで隠し続けてきた理由が分からない」(大手証券アナリスト)と、オリンパスの“異常さ”を指摘する。

 ただ、欧米では英国人のウッドフォード元社長が解任され、海外メディアに疑惑を告発したこともあり、日本企業全体の体質として批判する声が強まっている。

 日本の信用を回復するためにも、第三者委員会や捜査当局による真相解明が急務だ。

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菊川氏は「何でも乗る」ギャンブル好き オリンパス、財務が実権握り暴走 (1/2ページ)

オリンパスはなぜ財テクの損失を隠し、買収資金で穴埋めするという違法行為に手を染めたのか。菊川剛前会長兼社長ら財務や総務部門が経営の実権を握り、保身のため、問題を先送りしてきたという構図が浮かび上がる。外部を含む取締役会や監査役によるチェック機能も働かなかった。オリンパスは上場廃止の可能性もある会社存続の危機にひんし、世界から日本企業全体のガバナンス(企業統治)が疑問視される事態も招いた。

 「今まで黙っていて、大変申し訳なかった」。7日夕、高山修一社長から問いただされた菊川氏は、わびながら損失隠しを認めたという。直前に、解任された森久志副社長が損失隠しを“自白”しており、言い逃れはできなかった。2人とも違法性を認識していた。

 高山社長は「(菊川氏らはそれ以前の経営陣から損失隠しを)引き継いだようだ」としており、申し送りによる組織的な不正行為だったことがうかがえる。

 損失隠しに携わった菊川氏、森氏、山田秀雄常勤監査役の3人は、いずれも財務部門や総務部門といった中枢部門での社歴が長い。

 とりわけ一連の買収を主導したとされる菊川氏は平成11年に財務担当役員に就き、その前後から同社のM&A(企業の合併・買収)が活発化した。

 菊川氏は13年の社長就任後もM&Aへの傾斜を強め、参謀役として森、山田両氏がこれを支えた。財務・総務部門が経営を支配し、ノーチェックで暴走した構図が浮かぶ。

 「証券会社やM&A仲介会社に勧められると、何にでも乗ってくる。ギャンブル好きは有名で、ヤマっ気が強すぎる」

 菊川氏を知る大手企業首脳は、こう明かす。

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「サラリーマン根性」にメス オリンパス経理部の2人、“汚れ仕事”で出世 (2/2ページ)

三者委の調査や関係者の話などによると、同社は昭和60年以降、財テクに奔走。経理部に在籍していた山田秀雄前監査役(66)と森久志前副社長(54)が主に金融資産の運用に携わったが、バブル崩壊で含み損が膨らんだ。

 平成12年4月の時価会計導入を控えた10年、2人は含み損を抱えた金融資産を簿外に移す必要があると判断。大手証券OBらの協力を得て海外のファンドに飛ばし、菊川前会長ら歴代3社長に定期報告した。

 山田氏、森氏はその後、国内外4社の買収を利用した損失穴埋めでも中心的な役割を果たしていたとされる。“汚れ仕事”を一手に引き受け、出世の階段を駆け上がった2人だが、三者委の調査に「苦しかった」と心情を吐露したという。

 過去の“恥部”をひた隠し続けた旧経営陣。今月6日に公表された三者委の報告書には、厳しい表現が刻まれた。「経営の中心部分が腐っており、その周辺部分も汚染されていた」「悪い意味でのサラリーマン根性の集大成」…。

 作家で経済ジャーナリストの相場英雄さんは「オリンパスの不正経理は、日本企業が受けたバブル期の傷がいまだ癒えていないことを示している」とした上で、「こうした負の遺産を抱えた企業はオリンパス1社とはかぎらない。投資の世界では早くも、同様の怪しげな買収をしている企業がないかどうかを探す動きが出ている」と指摘している。

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