オリンパスはなぜ財テクの損失を隠し、買収資金で穴埋めするという違法行為に手を染めたのか。菊川剛前会長兼社長ら財務や総務部門が経営の実権を握り、保身のため、問題を先送りしてきたという構図が浮かび上がる。外部を含む取締役会や監査役によるチェック機能も働かなかった。オリンパスは上場廃止の可能性もある会社存続の危機にひんし、世界から日本企業全体のガバナンス(企業統治)が疑問視される事態も招いた。
「今まで黙っていて、大変申し訳なかった」。7日夕、高山修一社長から問いただされた菊川氏は、わびながら損失隠しを認めたという。直前に、解任された森久志副社長が損失隠しを“自白”しており、言い逃れはできなかった。2人とも違法性を認識していた。
高山社長は「(菊川氏らはそれ以前の経営陣から損失隠しを)引き継いだようだ」としており、申し送りによる組織的な不正行為だったことがうかがえる。
損失隠しに携わった菊川氏、森氏、山田秀雄常勤監査役の3人は、いずれも財務部門や総務部門といった中枢部門での社歴が長い。
とりわけ一連の買収を主導したとされる菊川氏は平成11年に財務担当役員に就き、その前後から同社のM&A(企業の合併・買収)が活発化した。
菊川氏は13年の社長就任後もM&Aへの傾斜を強め、参謀役として森、山田両氏がこれを支えた。財務・総務部門が経営を支配し、ノーチェックで暴走した構図が浮かぶ。
「証券会社やM&A仲介会社に勧められると、何にでも乗ってくる。ギャンブル好きは有名で、ヤマっ気が強すぎる」
菊川氏を知る大手企業首脳は、こう明かす。