◇伊勢神宮参拝後に記者会見
安倍晋三首相は6日、三重県伊勢市の伊勢神宮を参拝後、同神宮内で記者会見した。昨年末の首相の靖国神社参拝によって中国、韓国との首脳会談開催が遠のいたことについて、首相は「困難な課題や問題があるからこそ、前提条件を付けずに首脳同士が胸襟を開いて話をすべきだ。(参拝時の)談話で示した私の真意をぜひ直接、誠意を持って説明したい」と表明。靖国参拝を首脳会談の障害にすべきではないとの認識を示した。
【「アベノミクス1年」で変わった経済指標は…】アベノミクス1年 景気回復、裾野拡大 民需主導なお課題
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は6日の記者会見で「事前に十分な準備をすべきだ」と述べており、会談を巡る両首脳の主張には隔たりがある。首相は会見で「現時点で見通しがあるわけではない」とも述べた。
一方、首相は「日本経済は1年前の危機的状況から脱し、順調に回復軌道を歩んでいる」と強調。「この春こそ景気回復の実感を収入アップという形で国民に届けたい。このことが消費の拡大を通じて、さらなる景気回復につながる」と述べ、消費増税対策を盛り込んだ2013年度補正予算案や14年度予算案を審議する次期通常国会を「好循環実現国会」と位置付けた。政府の成長戦略を今年半ばに改定し、雇用、農業、医療分野などの構造改革を進める方針も示した。
また、首相は原発の新増設について「現在のところまったく想定していない」と明言。原子力規制委員会の安全審査が行われていることを踏まえ、「厳格な新安全基準を乗り越えた原発について、再稼働を判断していく」と述べ、再稼働に重ねて前向きな姿勢を示した。
安倍晋三首相が昨年2月、オバマ米大統領とワシントンで会談した際、ワシントン-ボルティモア間に超電導リニア新幹線を導入する構想について、総工費の半額を国際協力銀行を通じて融資する意向を伝えていたことが分かった。日本政府関係者が明らかにした。総工費が約1兆円と見込まれるため、日本政府は首相が再訪米した昨年9月までに、5000億円規模の融資を米側に追加提案した。実現すれば日本政府の対外融資で最大規模になる。【宮島寛】
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JR東海はリニア新幹線の特許技術の無償提供を米政府に申し入れ、首相はリニア新幹線導入を「日米同盟の象徴」と位置づけ、昨年2月の日米首脳会談で実現を提案した。しかし、融資に言及したことについては両政府とも公表していない。
米国のリニア新幹線構想は、ワシントン-ニューヨーク-ボストン間(約730キロ)の3都市を結ぶ。このうちワシントン-ボルティモア間(約60キロ)を早期開業区間としている。現在、この区間は約1時間かかるが、リニアを導入すると15分程度に短縮できる。
首相は昨年9月の訪米時に講演した際も、リニア新幹線について「日本では東京と名古屋間で開業に向けた準備が進んでいる。その前に、まずはボルティモアとワシントンをつないでしまおう」とアピールした。
日本政府関係者は「大統領は前向きだ」と話し、2014年11月の米中間選挙前にも判断する可能性があると見ている。ワシントン-ボルティモア間は東京-名古屋間(約286キロ)より大幅に短いため、14年中に計画が具体化すれば、27年開業予定のリニア中央新幹線を追い抜き、世界初になるとの見方もある。
一方、日本政府が行った対外融資では、12年末に契約した4250億円(1ドル85円換算)が最大。オーストラリアの液化天然ガス(LNG)事業に対する融資だった。日本は資源権益を獲得する目的以外で同規模の融資を実施したことがなかったが、同盟強化を重視する首相が押し切った。
日本としては、リニア技術が海外で採用されれば、国内関連産業の裾野が広がり、リニア中央新幹線の導入コストを引き下げるメリットも期待する。首相のブレーンであるJR東海の葛西敬之会長は14年4月、代表権を持つ名誉会長に就き、国際交渉に専念することもあり、官民挙げての働きかけが加速しそうだ。
【ことば】超電導リニア
日本だけが開発に成功している世界最速の次世代陸上交通システム。特殊金属をマイナス269度に冷やし、電気抵抗をゼロ(超電導現象)にして強力な磁力を発生させ、車両を10センチ浮かせて時速500キロ台で走行する。中国・上海などで運行中の常電導方式より最高速度が100キロ程度速い。JR東海は2027年に東京-名古屋間、45年に名古屋-大阪間で超電導リニアを開業予定。
◇資金・世論 米側に課題
安倍首相がリニア新幹線の輸出を目指し、オバマ大統領に巨額の融資案を示したのは「日米同盟の絆強化」という狙いが大きい。破格の提示に「大統領も導入に前向き」(日本政府関係者)とされるが、米側が資金をどう調達するかなど課題は多く、本格化する事前協議がヤマ場になる。
「この計画は従来のインフラ輸出とは次元が異なる。米国民の生活様式を一変させ、日米同盟の絆の証しとする大構想だ」。首相官邸関係者はそう語る。ワシントン-ニューヨーク間をリニア新幹線で結べば移動時間を3分の1にでき、航空会社は近距離便を高収益の長距離便にシフトできるメリットもある、と話す。
JR東海もリニアの特許技術を無償供与する方針を表明。「米国が、虎の子のステルス機技術を開放するような」(大手行幹部)踏み込んだ提案に、オバマ大統領は昨年2月の日米首脳会談で公式にリニア構想に「関心」を表明した。
しかし、ワシントン-ボルティモアの先行開業だけで建設費を回収するのは難しい。建設費の調達に米政府の関与は不可欠だが、歳出増につながる政策のハードルは低くない。
日本政府やJR東海は、米国要人と接触し、リニアの利点を説明するなど地ならしを進めている。ただ、長距離移動には航空機という意識が米国民には浸透している。首相官邸筋は、実現性について「米国民がどれだけ有益性を理解するかにかかっている」と話している。【宮島寛】
4日午後9時35分ごろ、大阪市西淀川区佃のマンション「佃第3コーポ」(14階建て)で「爆発のような音がして煙が出ている」と近所の住民から119番があった。9階の1室約60平方メートルのうち約10平方メートルが焼け、部屋の中で倒れていた男性が病院に搬送された。男性は意識不明の重体。
大阪市消防局によると、男性は70歳代ぐらい。消防と大阪府警西淀川署が出火原因を調べている。
現場は阪神電鉄千船駅の北約500メートルの住宅街。消防車23台が出動し、現場周辺は一時騒然となった。
出火した部屋の上の階に住む専門学校生の男性(20)は「突然、花火のような音がしたと思ってベランダに出たら、下から煙があがっていたので慌てて避難した」。近くに住む運送業の男性(44)は「かなり激しい炎が吹き出していた」と話していた。
超党派の国会議員で構成される「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連=通称・カジノ議連)が、カジノ解禁推進法案(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案)を2013年12月6日に国会に提出し、今月末に招集される通常国会で審議入りしそうな気配です。また、大阪でもカジノ推進の動きが活発化してきたようです。そこで、この際に、刑法典に規定されている賭博罪について改めてその存在意義などを見ておきたいと思います。
カジノ解禁推進法案
“橋下カジノ”本格化 誘致へ実動部隊発足 大阪
■賭博を処罰する根拠とは
まずは条文ですが、賭博罪の規定は次のようになっています。
刑法第185条(賭博)
賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物*を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
「賭博」とは、出た数字が偶数か奇数かといったような、偶然の事情によって金銭や財物の得喪を争うことであり、射幸的犯罪とも呼ばれます。しかし、自分の財産を自分の判断でどのように処分しようとも本来は自由だし、射幸心じたいも不確実性を征服したいという人の本能的欲求に根ざすと考えられますので、「ギャンブル=悪」という図式は短絡的な見方です。保険と賭けには関連性がありますし、株も先物取引も不動産投資も、基本的にギャンブルの性格をもっているといえます。未知なるもの、未来へと賭ける「射幸心」こそは社会の基本的な原理と深いところで結びついているといえそうです。
では、刑法が賭博をあえて禁止し、処罰する理由は何でしょうか。
学説には、射幸心をあおって他人の本能的な弱さにつけ込み、金銭や財物を賭けさせて、その結果、財産的被害を及ぼすことを刑法は処罰するのだとして、賭博罪を財産に対する罪に位置づける見解もあります。しかし、賭博は他人の財産をその人の意志に反して侵害するものではなく、財産的被害の点からだけでは賭博の犯罪性を説明することは難しいと思われます。また、反道徳性を強調するのも、後で見るように、社会の現実とかみ合っていないように思います。
そこで、学説の多くや判例は、賭博を放置すると国民の勤労意欲が失われ、さらに賭金の獲得や借金の返済のために窃盗や強盗など他の犯罪が誘発されることになるから、賭博を犯罪として禁止する必要があるとして、賭博罪を風俗ないしは経済倫理・秩序に対する罪と考えています。
【注記】*「一時の娯楽に供する物」とは、その場ですぐに消費される物であって、たとえばお菓子だとか、飲み物の類をいいます。金銭は「一時の娯楽に供する物ではない」というのが裁判所の考えですが、コーヒー代程度の少額のお金であれば、賭博にはならないと思われます。
■ギャンブルに対する価値観の変化
しかし、第二次世界大戦後の流れを見てみると、このような考え方が現在もそのまま通用するとは言いがたいように思われます。都道府県や市町村主催で地方競馬・競輪が実施されることになったのが昭和23年(1948年)のことで、以来、パチンコ店や公営ギャンブルが国民に広くギャンブルの機会を提供しています。ギャンブル産業は、年間2~30兆円規模とも言われ、賭博罪の規定が「財産上の損害」や「勤労の美風」を守っていると言うことには虚しさがともないます。
このような刑法の理念と社会の現実との大きなギャップを前にして、1970年代に賭博行為の非犯罪化論(刑法典からの削除)が強力に主張されたことがありました。その背景には、憲法の基礎にある個人主義と多様な価値観の共存を目指す社会観、あるいは刑罰を背景として一定の道徳・倫理を強制することを否定する刑法の脱道徳化の思想がありました。これらの思想は現在も魅力を失っていないと思いますが、その後も賭博罪の規定は厳存しており、今は正面から賭博非犯罪化論が議論されることも少なくなっています。
■賭博罪の再構成
ところが、90年代後半にインターネットが大ブレイクして、風俗犯の問題がクローズアップされてきました。賭博罪は、国民が海外で行った場合にも処罰される「国民の国外犯」ではないので、海外旅行中にカジノで遊んでも刑法の適用はありません。しかし、インターネットを通じて、海外のカジノ・サイトにアクセスし、ギャンブルをした場合は、犯罪行為の一部が日本国内で行われたという理由で国内犯となり、処罰することは可能となります。ギャンブルに対する考え方が国によって大きく異なるために、地球を覆う通信網と国内法である刑法との確執が表面化してきているのです。
ギャンブルが悪かどうかは別として、パチンコや公営ギャンブルなどの「合法的賭博」が存在するという法的現実、実際の検挙事例・検挙数、賭博が暴力団の資金源となっている現実などを考えると、違法な賭博経営を取り締まるという方向で、暴力団や八百長組織などの反社会的集団対策の一環として賭博罪を構成し直すべきではないかと思います。
東京電力が福島第1原子力発電所で働く作業員の賃金を改善するため、工事発注時に計算する人件費の単価(労務費)を1日1万円増やすと発表した後、元請け各社に「(作業員に渡される日当が)1万円増額されることを示すものではない」と説明する文書を配布していたことがわかった。発表の趣旨を事実上変え、元請けや下請けによる人件費の「中抜き」「ピンハネ」を容認する内容で、作業員から反発の声が上がっている。【前谷宏】
◇割増金「1万円増」発表後
厳しい作業が続く福島第1原発について東電は、本来の労務費のほか、被ばく線量や作業内容に応じた「割り増し分」を加えて工事を発注。ただ具体的な金額は「今後の契約や入札に影響が出る」と公表せず、作業員らから「元請けや下請けによる中抜きを助長する」と批判が出ていた。
しかし東電は昨年11月8日に福島第1原発の「緊急安全対策」を発表した際、これまでの労務費割り増し分の金額が「1万円」だったことを明らかにしたうえ、作業員の賃金改善のため翌月発注分の工事からさらに1万円を増額すると発表。配布資料にも「労務費割増分の増額(1万円/日→2万円/日)」と明記した。広瀬直己社長も記者会見で「元請けの皆さんにも(賃金改善を)徹底してくださいとお願いしますし、今回1万円増えることが末端の方(作業員)も分かるので、しっかりフォローしていきたい」と話した。
ところが、東電は11月29日になって資材部長名の文書を元請け各社に配布。「緊急安全対策のうち、『設計上の労務費割増分の増額』に関するお願いについて」との表題で、「施策の内容が正確に伝わらず、取引先様の現場対応に混乱を招いた」と謝罪。プラス1万円の労務費の増額が「作業員の皆さまの賃金改善を図っていこうとするもの」と改めて説明する一方で「(作業員に支給される)割増額が更に1万円増額されることを示すものではない」と述べた。
この内容について東電広報部の担当者は毎日新聞の取材に「作業員の賃金は請負各社との雇用契約で決められるもので、発注段階の労務費と実際に作業員に支払われる賃金とは異なることを説明した」と回答。発注段階の割増額を1万円から2万円に増額すると発表したことにも「代表的なモデルケースとして説明した。実際はより少ないこともあり得る」と述べ、実際の割増額は「契約上の話になるので回答は差し控えたい」と明らかにしなかった。11月8日の東電の発表は地元紙に「原発作業員手当を倍増」などと報じられていた。東電の文書について福島第1原発で働くある作業員は「賃金をきちんと増やす方針の会社とそうじゃない会社が出てきており、現場の不公平感が強まっている。東電の文書は作業員の士気の低下を引き起こしかねない」と話している。