この1カ月、オリンパス株の暴落で多くの株主が損失を抱えたが、世界最強の投資銀行と呼ばれる米ゴールドマン・サックスはひと味違った。株価の下落でも儲かる「空売り」をいち早く仕掛け、底打ち直前に買い戻すという売買を神業のようなタイミングで実行した。一連の取引で22億円前後の利益を上げたという計算もできる。その凄すぎる手口とは?
オリンパスをめぐる騒動の発端は10月14日、マイケル・ウッドフォード氏(51)が突如、社長を解任されたことだった。ゴールドマンはその前日の13日、オリンパス株を約83万株空売りしている。同日の終値2482円で計算すると20億円超の売りを一気に出したことになる。
空売りとは株を持たずに、ほかから借りてきて売却すること。株価の下落が予測されるときに使う手法で、値下がりした際に買い戻すことで、その差額が利益となる。
東京証券取引所は証券会社などが空売りした銘柄や株数の残高を日々公表している。それをみると、ゴールドマンは13日以降、一定程度買い戻しながらも、空売りを増やし続けている。
この手口について、ある国内証券マンは「ウッドフォード氏が経営陣を告発するのを聞いて、事態は深刻ということで、どんどん売りを増やしていった印象だ」と解説する。
「ついに来たか」。オリンパスの損失隠し事件で、東京地検特捜部などは21日午前11時半すぎから、関係先の一斉捜索に着手した。同社本社などには一様に険しい表情の東京地検係官や警視庁捜査員らが次々と入った。年の瀬間際の着手となった巨額の不正経理。寒風のオフィス街は異様な雰囲気に包まれた。
オリンパス本社が入居する東京都新宿区の30階建てオフィスビルには、午前11時40分ごろ、東京地検の係官らが入った。
ビル前には早朝から報道陣80人以上が待機したが、係官らはカメラを避けるように地下2階の業務用出入り口から本社内に入った。
オリンパス関連会社に勤務する男性は「ついに捜索の日が来たかという思いだ。一刻も早く事件が解決してほしい」と言葉少なに話した。
損失穴埋めに買収資金が利用された国内3社が入居する東京都港区の雑居ビルには約30人が入った。捜査員が到着すると、カメラのシャッターが切られ、ものものしい雰囲気に。オリンパスをめぐる家宅捜索と聞いた通行人の会社員男性は「ここに事件に関係する会社があるとは知らなかった」と驚いた様子だった。
川崎市の菊川剛前会長(70)のマンションにも捜索が入った。通勤や通学のためマンションから出てきた住民らは驚いた様子で、「何があったのか」と報道陣に質問する姿も目立った。