肝がんの死亡率が全国でも高い広島県が4月から、「肝疾患患者フォローアップシステム」の本格運用を始める。
B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染者のうち、登録した人に県が定期検診の受診を促す仕組み。「沈黙の臓器」と呼ばれ、自覚症状がないまま病気が進行する肝疾患の重症化を防ぐ狙いで、県は「積極的に登録してほしい」と呼び掛けている。
県薬務課によると、県の肝がんの死亡率(2012年)は10万人あたり、8・8人で全国ワースト5位。07年~11年でもワースト3位が3回、ワースト4位と6位が1回ずつと高い状況となっている。
肝がんによる死亡の多くはHBVかHCVが原因のため、県では13年度から同システムの運用を始め、市町や保健所の検診などで両ウイルスの感染が判明した人の登録を進めてきた。
14年度からは登録者に年1回、文書を送って定期検診の受診勧奨を行い、受診を証明する書類が返送されなかった場合、さらに保健師が連絡を取って状況を確認する。最新の知識を得るための講演会の開催案内を提供するなどの取り組みも始める予定だ。
ただ、登録者は3月23日現在で84人。献血で陽性反応が出る人の割合から、県内にはHBVの感染者は3万9000人、HCVが2万9000人いると推定されるため、今後、県では広く医療機関に呼び掛け登録者数の増加にも力を入れる。
肝がんは日本人のがんによる死亡で肺や胃などとともに死亡率が高い。HBVは母子感染や、かつて行われていた予防接種の針の使い回しなどで感染したケースが多い。一方、HCVは1992年に検査精度が上がる前に手術を受けた際の輸血で感染した人が多いとみられ、60歳以上の感染率が高い。
いずれも早期に発見すれば薬剤による治療が有効なので、同課は「まだ日本人の6割以上が未受診というウイルス検査で感染の有無を確認することが重要」と指摘。さらに、感染していた場合は自覚症状がないまま肝炎から肝硬変、肝がんに進行する可能性があるため、「定期的に検診を受けることが欠かせない」と強調する。
肝炎・肝硬変・肝がん 治療法はここまで進