心の病の予防と、早い段階での対処に効果を発揮するだろうか。
厚生労働省は企業に対し、従業員へのストレス診断を実施するよう義務付ける方針を決めた。今国会に労働安全衛生法改正案を提出し、2015年度中の実施を目指す。
誰もが多少なりともストレスを抱えて働いている。ただ、過重なストレスは、うつ病などを引き起こす。精神疾患による労災認定が増えているのは問題だ。
ストレス診断は、従業員のふるい落としが目的ではない。従業員に、うつ病などのサインに気づいてもらう。企業は社員の治療や職場復帰を支援し、職場環境の改善を図る。診断を定着させようという厚労省の狙いは理解できる。
具体的には、年に1回、医師か保健師が質問票を用いて、従業員の疲労度、不安感などを評価する。本人が希望すれば、医師の面接指導を実施する。
勤務の負担を減らす必要があると医師が判断した場合、企業側に配置転換や労働時間短縮といった対策を求める仕組みだ。
働き盛りの従業員が、症状の悪化により職場を離れれば、企業活動に響く。心の健康対策は、社会や経済の損失を減らすためにも重要だ。損失額は年2・7兆円に上るとの試算もある。
だが、ストレス診断の義務付けには、課題も多い。
診断の対象は雇用者全体に及び、約5500万人に上る。診断を実施するには、産業界全体で、1回につき100億円単位の負担が生じるという。
コストに比べ、どの程度の効果があるのか。法案審議では、その観点からの議論が求められる。
面接指導を行う医師の確保も課題だ。従業員へのメンタルヘルスケアを実施している企業は47%にとどまる。産業医のいない小規模な企業では、特に遅れている。
産業医の資格を持つ開業医が中小企業の「かかりつけ医」となるように促すなど、厚労省は企業の対策を後押しすべきだ。
産業医らが企業に心の健康対策を助言するため、各都道府県に設置されている「メンタルヘルス対策支援センター」を有効に機能させることも必要だろう。
うつ病を発症し、休職した場合の援助も大切である。再発しやすく、スムーズに職場復帰できるとは限らないからだ。
臨床心理士らが休職者にカウンセリングを行い、成果を上げている企業もある。そのノウハウを普及させていきたい。
エコ・ストレスチェック クリップ直定規 15 【ノベルティ TMC】