死亡率14年連続全国1位
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江口センター長が開発した教材
肝がんによる人口10万人あたりの年間死亡率で、佐賀県は14年連続で全国1位という不名誉な状態が続いている。
毎年約300~400人が肝がんで命を落としており、死亡率を下げるため、県や医療機関に加え、県民有志が自治会単位で肝炎ウイルス検査を呼びかける活動に乗り出すなど、官民を挙げて対策に力を入れている。
◆自治会単位で予防・治療法学ぶ
佐賀市大和町梅野の内藤紀行さん(72)は、1987年頃、風邪を引いたときに受けた検査で、C型肝炎ウイルスに感染していることを知った。当時は40歳代の働き盛りで忙しく、自覚症状もないため、治療をせずに放置した。
それから12年後、精密検査で肝臓に小さながんが見つかった。肝臓の一部を摘出する手術で事なきを得たが、再発を防ぐため、それ以降、約3か月に1度の検査を続けている。内藤さんは「もっと早く治療をしていれば……」と悔やむ。
地元は人口約1000人の小さな集落だが、肝がんで亡くなったり、肝がん・肝炎の治療を受けたりしている人は知っているだけでも、数十人に上る。
「集落の中で、肝がんで亡くなる人を一人でも減らしたい」との思いを強くした内藤さんの呼びかけで、昨年9月、自治会主催の「肝臓フォーラム」が地元小学校の体育館で開かれ、約300人が集まった。佐賀大医学部教授で肝疾患センターのセンター長を務める江口有一郎医師が肝がんの発症や治療、予防について講演した後、江口医師と参加者の意見交換会も開かれた。県によると、肝がん撲滅に向けた住民の自発的な活動は県内初だという。
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これを契機に、自治会内で「県の無料肝炎ウイルス検査を受けてみよう」という声が高まり、住民が隣近所に検査を勧める、草の根的な活動が始まった。
内藤さんは「がんへの意識を高める活動をさらに続けていきたい」と話す。
そもそも、なぜ、県内で肝がんの死亡率が高いのか――。県健康増進課によると、全国の肝がん死亡者の約8割がC型肝炎ウイルス感染者と推計されるが、県内のC型への感染率は全国平均の約3倍という。
江口センター長は「1920~40年代に佐賀と福岡の県境を流れる筑後川流域で流行した『日本住血吸虫症』の治療の際、十分な消毒がされていない注射器で回し打ちが行われたという見方が一般的」と説明する。ウイルスは、輸血や妊婦からの母子感染などによって広がり、高齢化すると発症しやすくなるため、高い死亡率につながっているとみている。
ウイルス感染だけでは無症状のため、内藤さんのように放置するケースが多く、症状が出た頃には肝がんや重度の肝硬変になっていることもある。
佐賀大の肝疾患センターでは昨年7月、ウイルスの感染経路や感染発覚後の対処の重要性について親子で学べるすごろくなどの教材を開発。県もウイルス感染の有無を調べる無料検査を続けており、感染者に効くという「インターフェロン」の投与にも2008年度から助成を始めている。これまで健康保険を使っても月約8万円かかっていた治療費が、助成で2万円以下に軽減された。
江口センター長は「肝炎ウイルスに感染していても治療をすれば菌を体内からなくすことは可能。まずは検査を受けて自分の肝臓の状態を知ることが重要」と呼びかけている。
◆がん闘病の悩み 相談員養成
肝がんだけでなく、全てのがんによる年間死亡率についても県は全国12位と高い。このため、がん予防の活動を行うNPO法人クレブスサポート(佐賀市)が昨年、がんの闘病体験を生かして患者やその家族が抱える悩みの相談に応えるピアサポーターの養成事業を始めた。
昨年9~11月、佐賀大医学部の医師らを招いて、患者から相談を受ける際の注意点や心理ケアに関する基礎知識について学ぶ講座が3日間あり、18人のピアサポーターが誕生した。
同法人は、今年6月から月に1度、佐賀市中心部で数人のピアサポーターが常駐するサロンを開き、がん患者らが気軽に生活や悩みを相談できる場をつくる予定。2015年までにサポーターを100人ほど養成し、サロンを拠点に相談の場を増やしていく方針だ。
胃がんを経験した同法人の鶴田憲司事務局長(72)は「病院にも相談窓口はあるが、敷居の高さを感じている人が多い。今は、地域ががん患者と家族を支えなければいけない時代。ピアサポーターの役割が重要となる」と話した。
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