弘前大が、福島県浪江町で行った除染植物「ネピアグラス」の実証実験で、放射性セシウムの吸収効果が、最も高いとされる植物「アマランサス」より、約4倍高い結果が出た。
同大では「効果が高く、除染と農地保全に有益」としている。実験成果を受け、今後、隣の大熊町などと大規模な植物除染に着手する方向で協議に入った。
ネピアグラスは熱帯アフリカ原産のイネ科の多年草だ。弘前大は、浪江町と東京電力福島第一原発事故に対する支援協定を結んでいる。
実験は同大農学生命科学部の姜東鎮准教授らが昨年5月から10月にかけて浪江町の水田跡地と牧草地跡地の0・5アールずつで行った。
通常の除染で表土をはぎ取る前の農地の放射性セシウム量を100%とした場合、表土はぎ取り後も15~20%のセシウムが残る。この農地に、ネピアグラスを植えてどれだけセシウムを吸収できるか確認したところ、これまで最も高いとされてきた除染向けの植物「アマランサス」(最高値0・193%)に比べて、約4倍(最高値0・721%)高かった。
また、ネピアグラスは熱帯植物で福島では穂が実らず越冬できないが、逆に「吸収したセシウムを花粉などの形で拡散しない事が利点になる」(姜准教授)という。姜准教授は、「除染に一定の効果が望め、荒れた農地の再生に有効だ。ネピアグラスの苗づくりなどで地域雇用にも寄与できる」と話し、5~10年植栽を行えば、地力を維持したままで相当の除染ができると見込んでいる。
また、浪江町の隣の同県大熊町と共同で、復興事業に取り組んでいるコンサルティング大手「アクセンチュア」は、今回の成果を基に、同町で、ネピアグラスによる除染とバイオマス発電に取り組む方向で町と協議に入った。刈り取ったネピアグラスや除染で伐採した木材から放射性物質を除去し、バイオマスエタノールに加工し、バイオマス発電燃料にする事業だ。姜准教授は、同町では2014年度に10アール、15年度は10ヘクタール、16年度には720ヘクタールに植栽を行いたい考えだ。
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