2014年2月期の通期営業利益見通し2000億円~2100億円(前期比4.9%~10.2%増)の達成は難しい状況となった。イオン <8267> は1月10日に第3四半期決算を公表。中間期まではかろうじて増益だったが、今回、9カ月累計の営業利益は948億円(同4.1%減)だった。営業利益実績を個別に見ると、国内事業では総合金融事業を筆頭に好調な一方、GMS(総合スーパー)が65億円(前年同期比横ばい)、SM(食品スーパー)は37億円(同67%減)と本業の不振が目立った。GMSでは2013年年8月から子会社化したダイエー <8263> や、衣料品が不振だったイオン九州 <2653> の営業損失が響いた。SMではコンビニエンスストア、ドラッグストア、ディスカウントストアなど他業態との競争激化に加え、2012年4月にJ.フロントリテイリング <3086> から買収したイオンマーケット(旧ピーコックストア)の改装など、先行投資負担による業績低迷が影響した。さらに中核小売会社のイオンリテールでも、GMSの既存店売上高が第2四半期まで1%増だったが、第3四半期は衣料品の不振から1.3%減となり、衣料品だけでは第3四半期までの累計で3.6%減となった。値下げによるロス率も0.7ポイント上がり、採算を圧迫した。■ 「トップバリュ」の拡販にも懸念
イオンの森美樹副社長は1月10日の決算会見で、「第2四半期はぎりぎり増収増益だったが、その第2四半期でも消費環境は厳しく、第3四半期も厳しかった。資産効果も家庭まで波及しなかった。そこへダイエー、ピーコックの影響が加算された」と説明。
業績見通しを変えなかったことについては、「昨年12月から駆け込み需要の数字が出ている。これで2月ぐらいにはかなりの売上高が出る。(第4四半期は)ダイエー、イオンマーケットもぼちぼち現場力がついてくる」と述べた。
一方、PB「トップバリュ」の拡販に若干の懸念がある。今期は年商1兆円を目標としていたが、第3四半期までの合計で5463億円。「確かに1兆円は厳し い。農水畜など相場変動の商品の開発が遅れ、この影響が出ている。(開発を)断念した商品もある4月以降の対策をしっかりしていきたい。商品を全面的にリ ニューアルして新商品として展開していく」(横尾博専務)とする。
GMSは第3四半期までに全344店のうち51店を改装し、改装後の売上高実績は3.4%増と、非改装店と比べ4ポイント向上しているという。同様に、SMも800店のうち290店を改装し「残りの店舗も着実に改装を進める」(森副社長)。イオンマーケットは全81店のうち20店を改装し、ワオンカード、自動発注システムやイオントの共通レジの導入を進めている。
第3四半期までの改装効果と改装の継続、また消費増税前の駆け込み需要の取り込みで期初の業績計画の達成を図るのがイオンの基本戦略だ。しかし、9カ月累計の営業利益が948億円であり、さすがに第4四半期の3カ月だけで営業利益を1000億円強を叩き出すのは難しく、期末に向け下方修正の可能性が高そうだ。
今期に子会社化したダイエーに目を向けると、第3四半期は営業損失79億円、最終損失191億円を計上し、2014年2月期の業績計画を黒字見通しから営業損失60億円(最終損益は未公表)に下方修正した。
減額の最大の理由は、衣料品の不振。当初計画では第3四半期に衣料品は既存店ベースで前年同期比横ばいを計画していたが、天候不順や商品・売り場改革が途上にあることから、5%減で着地。値下げロスから粗利率が悪化した。
また、食品も2012年9月から2013年11月まで合計7回に及ぶ1000品目単位でのナショナルブランド商品の大量値下げを行っている。計画には織り込み済みだが、これも粗利率低下の一因だ。また、夏場の猛暑で光熱費を中心に販管費も計画比で増加した。
既存店売上高全体では衣料品の不振から第3四半期1%増計画が0.1%減となり、第4四半期も当初4%増計画を2%増に修正し、下期(2013年9月~2014年2月)1%増、通期横ばいを計画。12月実績は3%減だったが、「消費増税前の駆け込み需要を考えれば、十分に達成可能」(ダイエー)としている。また、衣料品の値下げロスの平準化で、第4四半期は営業黒字化する公算だが、これも前年同期の営業利益を前提にしており、「売上高が達成できれば可能」(同)としている。
■ イオン傘下「ダイエー」の屋号はどうなる?
今期は新店13、退店16、改装40を予定し、第3四半期までに、それぞれ8、13、30が実施された。第4四半期は衣料品の商品・売り場改革を進め、2014年度に予定する東京・碑文谷店など旗艦店の大型改装につなげていく見通し。現状では改装店舗は改装前に比べ20%増の売上高の実績があり、これによって2014年度は営業黒字化を目指す。
イオンとのシナジーとしてリファイナンスや借入金利の低下、またPB統合などが実施されたが、今後の注目は店舗の屋号の統合や店舗閉鎖がどうなるかだ。
この点について、10日のイオンの決算会見で村井正平ダイエー社長は「屋号の統合については決定していない。店舗閉鎖は、耐震面などで今後、対応できない出来ない店舗を除き、できる限りしたくない」と話すにとどめた。イオンPB「トップバリュ」の品目数は、2013年2月期が3500品目(年商180億円)だったが、第3四半期末で4800品目となり、2014年2月期末には5000品目に増える公算だ。ダイエーにとって、来期の営業黒字は至上命題であり、正念場の1年になる。