市の面積の約9割を占める森林を生かし、兵庫県宍粟市が森林浴による癒やしやリラックス効果が科学的に実証された地域に与えられる「森林セラピー基地」の認定を目指している。
認定機関からお墨付きをもらうことで、市民の健康増進と観光振興の〈一石二鳥〉を狙う。認められれば、県内初となる。
基地は、産官学が連携したNPO法人「森林セラピーソサエティ」(東京都)が申請を受け、認定する。専門家の実証実験で森林浴による心身のリラックス効果が科学的に裏付けられた地域を基地とし、同地域内の散策路は「森林セラピーロード」とする。現在、基地と散策路を合わせ、東京都や北海道など全国57か所が認定されている。
市は1月、約658平方キロの市全域を基地として申請。ロード候補地には、県立国見の森公園(山崎町上比地)内の山道約700メートルと、日本の滝100選の一つ原不動滝(波賀町原)近くから赤西(あかさい)渓谷までの約7キロ、音水(おんずい)渓谷までの約6キロの3ルートを挙げた。
市は5月にも有識者や森林セラピスト、観光業者らを交えたプロジェクトチームを発足させる。基地やロードの整備方法、観光客を案内するガイド養成プログラムの内容を検討する。
実験は今夏、ロード候補地と市街地で女子大生約20人に協力してもらい、脈拍数や血圧、副交感神経の状態を測定し、数値などを比較する。樹木が放つ香り成分を浴びたり、川のせせらぎを聞いたりすることで、ロード候補地での数値が市街地より低ければ、リラックス効果があるとされる。早ければ、来年3月中にも認定されるという。
市商工観光課の大谷奈雅子課長は「認定を受けることで森の付加価値を高めることができる。癒やしと健康をキーワードに、市民に森の魅力を再発見してもらうとともに、観光客の誘致に力を入れたい」と期待している。