今年4月から消費税が8%に引き上げられます。消費税率のアップは、1997年4月に3%から5%に引き上げられて以来、17年ぶりです。「アベノミクス」で景気回復ムードが高まっていますが、消費への影響を懸念する声もあります。増税によって、私たちの家計はどれくらい影響を受けるのか。消費増税後に自由に使えるお金はどれくらい減るのか。個人消費の問題に詳しい、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの尾畠未輝さんに聞きました。
可処分所得って何?
総務省「家計調査」の全国の二人以上世帯のうちの勤労者世帯の統計を基に、尾畠さんが消費税が8%にアップした際の「可処分所得」への影響を年収ごとに試算。
可処分所得とは、年収から所得税、住民税などの税金や社会保険料などを支払った後に残った、自由に使えるお金のことで、消費と貯蓄に振り向けられます。
消費税アップ後、自由に使えるお金はどれだけ減る?
[図表]消費増税後の可処分所得は?
200~250万円で負担増加率がもっとも高く
それでは年収ごとに、1か月の可処分所得はいくらになるのか、みていきましょう。
年収200万円未満の場合、1か月の実収入は17万1834円で、可処分所得は15万7316円から15万4559円に減少。2757円の負担増になります。これは、消費税引き上げ分と毎年段階的に引き上げられる公的年金保険料のアップ分を加味したものです。負担増加率でみると1.75%になります。
年収200~250万円では、実収入24万0730円で、可処分所得が21万3977円から20万8190円と5787円減少し、負担増加率は2.70%。450~500万円では、実収入は39万1045円で、可処分所得は33万2804円から32万6018円と6786円減少し、2.04%の負担増。750~800万円では、実収入は57万2227円で、可処分所得が46万8662円から45万9248円と9414円減少し、2.01%の負担増。そして、1500万円以上では、実収入は123万9107円で、可処分所得が93万0085円から91万2266円と1万7819円減少し、負担増加率は1.92%となります。
逆進性はどうなる?
消費税は、低所得者ほど税負担率が高くなる「逆進性」が指摘されますが、負担増加率でみると、200万円未満の層が逆に一番低くなっています。尾畠さんによると、これは試算に低所得者対策として1万円を支給する「簡素な給付措置」が組み入れられているからで、この1万円の支給分を除くと負担率は2.11に増加します。ただ、負担率は200~250万円の層が一番高く2.70%です。200万円未満の層は、年収ゼロの人も含むため、データにばらつきが出てしまうため、このような試算結果になっています。
また、簡素な給付措置は1年半分を一括で支給するため、尾畠さんは「月ごとにならして使うことはあまりないと思われるので注意が必要」としています。
消費行動はどうなる?
実際に消費税が上がったらどういう消費行動になる可能性があるのでしょうか。尾畠さんは「賃金が上がればこれまでと同じように消費できるが、賃金が増えない場合は、「まずは贅沢品を削る、次に生活必需品でもなるべく安いものを買うという流れになる。ただこれは賃金が上がらない場合。賃金が上がれば、これまでと同じように消費することができますが」と語り、賃金が上がらず、安いものを選ぶ消費行動になると、結局デフレに戻ってしまう懸念を示しました。