デフレ時代を養分に売り場に咲いた白い花、プライベートブランド(PB)。だが、コストカット追求の先に、安全性がこぼれ落ちたりはしないのか。PB商品を展開する企業に話を聞いた。
PB売り上げトップのイオンは今年1月、傘下の研究開発機関である「生活品質科学研究所」が千葉市美浜区の本社近くに「中央研究所」を設立し、本社との連携を強化した。約220人の社員をおき、新商品開発のほか、最低年1回はメーカーから出荷前の商品を送ってもらい、イオン独自の規格基準に合っているかを検査する。
2008年、国産小豆商品に中国産が混ぜられイオンのPB商品などに使われていた事故では、「初回生産時のサンプリング調査と、その後の抜きとり調査では問題なかった」という。そこで検査同様に重視しているのが「工場監査」だ。ISO22000の審査員と同等の力量を持つ「審査員補」の資格を有する社員を数十人抱え、ISOに国際的な衛生管理基準であるHACCPを組み合わせた独自の「工場評価基準」に基づき、年1回309項目のチェックポイントを検査する。
他の小売団体でも、チェックポイントを明確化した監査システムをメーカーや外部団体などの協力で作り、安全性を確保する取り組みが進んでいる。約3800店舗のスーパーが構成する共同仕入れ組織「CGC」では、農林水産省が作ったものに作業員の手洗い時間、工場の照度などを具体的数値で示した独自の項目を加えた「工場チェックリスト」を公開。メーカーに自主的な課題改善を促す。
PBに力を入れるセブン&アイHDは一つの商品について原材料の土壌調査情報などから工程表、商品の検査に至るまで数十ページにおよぶ「原料確認書」を作り、それにのっとって様々な情報を確認、把握している。担当者は「うちくらい食品の品質管理について徹底しているところはないのでは」と自負する。
PB市場の成長は、安全性確保についてのレベルアップをもたらしている──小売りとメーカー側の認識は一致する。
一方でPBにまつわる最大の懸念は、商品開発に携わるメーカーの疲弊かもしれない。あるメーカーは「こちらがPBを受注するのは、流通業者と密接な関係になり、ナショナルブランドの受注率をあげてもらいたいなどの思惑もある。売り上げの点では、大手小売りを除くと製造ロットに見合わないことも多々ある」と語る。また別のメーカーは、さらに率直な悩みを口にする。
「メーカー側の努力にも物理的に限界があるうえ、流通側のリクエストは厳しく、商品の安全基準のハードルはどんどん上がり、とても厳しい状況。消費者はそういうことを全く知らず、ささいな不備でもクレームがある。正直、『無体なこと』をさせられていると感じますよ」