政府によるエコカー補助金が復活したこの冬、クルマの買い換えを検討している人は多いはずだ。そんななか、トヨタ自動車が2011年12月26日、新型のハイブリッド車(HV)を発売した。同社の「ヴィッツ」と並ぶコンパクトカークラスのHV「アクア」だ。月間の販売目標台数は1万2000台と最近の新型車としては非常に多く、このクルマに賭けるトヨタの意気込みが伝わってくる。アクアは「プリウス」と同じく、トヨタ系列の全ディーラーが販売する。
アクアの売りは、世界トップとうたう燃費の良さだ。新基準のJC08モード燃費で35.4km/L、旧基準の10・15モード燃費では40km/Lを達成している。現行のプリウスは30.4~32.6km/L(JC08モード)、競合車となるホンダの「フィット ハイブリッド」は26km/L(同)なので、かなり優れた数字だ。
プリウスよりアクアの燃費が上回るのは、車両重量が軽いため。車重はプリウス(G ツーリングセレクション)が1380kgなのに対してアクアは1080kgと、実に300kgも軽い。パワーコントロールユニットやモーター、バッテリーなどを含むHVシステム全体で42kgも軽量化が図られているという。また、フィットHVに対しても、車重は50kgも軽い。加えて、フィットHVがあくまでエンジンを主体としたマイルド・ハイブリッド車であるのに対し、アクアはプリウスと同じくストロング・ハイブリッド車と呼ばれる部類だ。
アクアに採用されたHVシステムは、プリウスやSAIと同様の「リダクション機構付きTHS II」。1.5Lのアトキンソンサイクルエンジンと高出力のモーターを組み合わせて、モーター走行ができる頻度を上げている。例えば、発進・加速時にエンジンを使わずに走り出せることが多いため、渋滞の多い市街地などではアクアの燃費の良さがより際立つはずだ。アクアの1.5Lエンジンは約70%の部品が新設計されており、クールドEGRと電動ウォーターポンプを新たに採用することで、燃費改善に役立てている。また、触媒一体型エキゾーストマニホールドは、排気ポートに触媒を近づけたことで暖機時間をプリウスより67%も短縮したという。
パッケージングに目を転じると、こちらはフィットHVとは互角という印象。アクアは全長3995mm、全幅1695mm、全高1445mm、フィットHVは全長3900mm、全幅1695mm、全高1525mmだ。室内長はアクアが90mm広く、逆に室内高はフィットHVのほうが115mm広い。しかし、いずれも足元の広さ、後席の頭上空間の広さに不満を憶えるレベルではないだろう。ただし、荷室の広さには多少違いがあり、アクアの305Lに対してフィットHVは344Lと、より多くの荷物を積める。
気になるアクアの価格は、装備を簡略化したLグレードが169万円、最量販グレードのSは179万円、装備が充実したGグレードは185万円という設定だ。対してフィット ハイブリッドはノーマルタイプが159万円、装備が充実したスマートセレクションが172万円、ナビ付のプレミアムセレクションが210万円という形。全体にアクアのほうが高めの設定だが、その差は10万円程度。搭載バッテリーの大きさやモーターの性能の違いを考えると、アクアの価格はかなり安く抑えられていると言える。エコカー補助金とエコカー減税の両方が受けられる2012年3月末までに予約が殺到するのは確実だろう。
(文/勝俣 哲生=日経トレンディ)