「カレーは和食」は23%
先日「ユネスコ無形文化遺産」に登録された「和食」。震災以降家族で食卓を囲みながら食事を摂るというライフスタイルが浸透し、それに合わせて日本食、和食が見直される機運が高まっていたこともあり、ますます和食へ注目が集まるようになった。それでは我々が普段の食事で良く口にする、シンプルなタイプの、そして日本ならではの料理達、例えばカレーライスやラーメン、海老フライ、たらこスパゲティなどは和食と呼べるのだろうか。
次のデータは辻調グループが2013年12月に発表した、和食に関するアンケート調査によるもの。同グループは食のプロを養成する学校を運営しているが、アンケートの回答者は一般人である。それによると、提示された「日本で良く食されている、日本ならではの料理」において、「これは和食である」との肯定意見をもっとも多く受けたのは「焼きそば」だった。それでも44.6%と半数には届いていない。
↑ 以下のメニューは「和食」だと思うか(「思う」人の回答率)↑ 以下のメニューは「和食」だと思うか(「思う」人の回答率)
「ラーメン」以下は肯定率が大幅に低下する。「海老フライ」「たらこスパゲティ」まで合わせ28%前後。日常生活の中でもっとも食卓に登るとされている「カレーライス」(「家庭の食卓で一番良く登場し、家族にも喜ばれる手料理とは?」)ですら、「和食」とする意見は22.7%でしかない。
「ナポリタン」は18.2%。意外に思う人もいるだろうが、「ナポリタン」はイタリアのナポリ発祥ではなく、日本発祥の料理である(もっとも諸説があるため、どの店・場所が発祥なのかは確定されていない)。
その他、大衆食堂によく並ぶ、そして子供が好きそうな日常的メニューが並ぶが、「和食」としての肯定意見はいずれも少数に留まっている。
和食と日本食と家庭料理と
焼きそばやカレーライスなど、日常的に創られる日本独特の料理が和食扱いされない、肯定派が少数なのは、「和食」の定義が曖昧なのが最大の理由だろう。農林水産省の基本政策における食文化のページによると「和食;日本人の伝統的な食文化」との表記があり、その特性として「多様で新鮮な食材と素材の味わいを活用」「バランスがよく、健康的な食生活」「自然の美しさの表現」「年中行事との関わり」を挙げている。この定義に従えば、大まかには明治維新以前の日本における食文化の中で育まれてきた料理が該当することになり、焼きそばやカレーライスはその条件からは外れてしまう(世間一般的に「寿司」と言われる握りずしは江戸時代の考案、食材を衣につけて油で揚げる料理「天ぷら」もその名前で広く浸透したのは江戸時代に入ってからである)。
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もっとも焼きそばにしてもカレーライスにしても、日本の歴史の中で工夫・変化を経て作られた料理であることに違いは無く、「日本食」「日本料理」としては誰も疑う余地はない。また、「日本食」はそのままイコール「和食」であるとする考え方もあり、この場合は焼きそばやカレーライスは和食と定義されることになる。
また、例えば肉じゃがのように元々は洋風・中華風ではあるが、日本の食卓で独自に進化変容を遂げた「家庭料理」も少なくない。これらもまた、「和食」と呼ぶか否かは難しい問題となる。
現時点では焼きそばですら、「和食」扱いをする人は5割足らず。明治維新以降の生まれとなる料理達は新参者として、和食の肩書をいただくのはまだ時期尚早扱いされているようだ。そして和食として足りない要素が「時間」にあるのだとすれば、あと半世紀もすれば焼きそばもカレーライスも「和食」と呼ばれるようになるのだろうか。