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オリンパス:損失隠し 財務、経理は社長直轄 「極秘事項」で継続

オリンパスによる一連の損失隠しは99年当時に社長だった岸本正寿元会長(75)が主導的に関与した疑いが強まった。元財務担当幹部らの証言によると、財務や経理は社長直轄で、岸本氏ら一部の幹部による「極秘事項」として損失隠しが続けられた可能性が高い。

 オリンパス関係者によると、同社がバブル期に投資した「特定金銭信託(特金)」などの金融商品の含み損は99年3月期の決算まで「短期特定金融資産」(特金資産)や「預金」などの項目に簿価で計上し、明るみに出ることはなかった。

 岸本氏が社長に就任したのはバブルが崩壊し、「財テク」の損失が膨らみ始めた93年。元々は営業畑で欧州へ赴任したが、帰国後は社長就任まで経理担当の取締役を務めていた。当時の財務担当幹部は岸本氏について「とにかく数字にこだわった。社長が主導して経費削減をしなければという思いがあった」と語り、社長在任中は「コストカット」に辣腕(らつわん)をふるった。

 岸本氏は含み損などの解消に取り組み、95年3月期に474億円余あった特金資産を減少させ、99年3月期には293億円余になった。また、含み損の計上項目ともなっていた現金・預金を95年の1027億円余から98年3月期には776億円余まで減らした。それでもまだ多くの含み損が残っていたとされ、99年に決算の監査を担当する会計士は01年3月期の時価会計導入前に含み損を処理するよう進言。これを受け00年3月期に同社が「出資金」として計上した約300億円について、同社の第三者委員会は損失隠しである「飛ばし」とみている。

 この約300億円の出資先の事業について検討する「事業投資審査委員会」の委員長は、当時常務取締役で、損失隠しに深く関与することになる菊川剛前会長(70)だった。【杉本修作、山本太一、山下俊輔】

毎日新聞 2011年11月29日 東京朝刊

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<オリンパス>第三者委、監査法人の責任指摘へ

オリンパスの損失隠し問題で、同社の第三者委員会(委員長・甲斐中辰夫弁護士)は監査法人の責任についても調査報告書に盛り込む方向で最終調整していることが分かった。報告書は01年まで社長を務めた岸本正寿元会長(75)や後任の菊川剛前会長(70)ら歴代経営陣の関与も記載し、6日にも発表する。

 関係者によると、同社は90年代に財テクに失敗し、多額の含み損を抱えた有価証券の損失計上を先送り。時価会計制度導入(01年3月期)を機に海外投資ファンドなどに損失を移す「飛ばし」を行ってきた。06~08年の英医療機器メーカーや国内ベンチャー3社の買収に伴う投資助言会社への報酬や買収資金など計約1400億円の大半を、複数のファンドを通じて損失の穴埋めに流用し、その仕組みには国内大手証券会社OBらが深く関与していた。

 オリンパスの監査は09年3月期まで「あずさ監査法人」が、10年3月期からは「新日本監査法人」が担当。第三者委は、10年以上にわたり損失隠しを見抜けなかった責任は重いとして、両法人の監査体制の問題点などを報告書で指摘する方向で調整している。

 一方、岸本元会長は第三者委の聴取に「損失隠しには関わっていない」と説明した。だが、元会長が社長を務めていた00年3月期決算で総額数百億円の含み損があったにもかかわらず、特別損失を約170億円しか計上しなかった点などを第三者委は重視。当時、経理に関わる部署は社長直轄だったことなどから、「知らなかったはずはない」と判断したとみられる。

 菊川前会長については、損失隠しの実務を主導したとされる山田秀雄前常勤監査役(66)や森久志前副社長(54)らが「前会長に報告していた」と話しており、第三者委は前会長も不正を認識していたとみている模様だ。前会長は、第三者委の聴取に「損失隠しは知っていたが、額については最近知った」と釈明しているという。

 一方、社長を解任されたマイケル・ウッドフォード氏が言及した「反社会的勢力など外部への資金の流出」の可能性については、含み損額と損失穴埋め額がほぼ同額だったことなどから、認められなかったと結論づけるとみられる。

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オリンパス:損失隠し千数百億円

オリンパスの不正経理問題で、同社が有価証券などへの投資で出した損失が千数百億円に上っていたことが関係者への取材で明らかになった。損失隠しには、含み損を抱えた有価証券などを社外の投資ファンドへ移し、損失を表面化させない「飛ばし」の手法が使われていたという。

 オリンパスは過去の決算を訂正する方針だが、大幅な下方修正は必至。14日に延期していた11年9月中間連結決算の発表はさらに遅れる可能性もある。そうなれば東証の監理銘柄に指定されることになる。

 オリンパスは財テクに失敗し、バブル崩壊後の90年代、有価証券などの値下がりによって多額の含み損を抱えた。関係者によると、含み損は千数百億円に上り、決算で損失を計上する必要があったが、「会社の株価や業績に影響が出る」との判断から、歴代社長や総務担当役員が代々先送りしてきたという。

 損失の表面化を回避するため、オリンパスは日本の証券会社出身者らと協力し、社外の複数の投資ファンドへ含み損を抱えた有価証券などを移し替えた。そのうえで、英医療機器メーカー「ジャイラス」の買収に伴う投資助言会社への支払い660億円(当時の為替レート換算)や、国内3社の買収費用734億円の大半をこれらのファンドへ還流させ、損失をひそかに穴埋めしていたとみられる。

 オリンパスの企業買収に絡む不正を調査している第三者委員会(委員長・甲斐中辰夫弁護士)も一連の経緯を把握している模様。今後、関係者への聞き取りなどを本格化させ、損失額や「飛ばし」のスキームの全容解明を進める。【竹地広憲】

毎日新聞 2011年11月9日 11時43分(最終更新 11月9日 12時39分)

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オリンパス:買収先「助言会社知らぬ」…穴埋め流用裏付け

【ロンドン笠原敏彦】オリンパスが証券投資の損失を隠していた問題で、焦点となる英医療機器メーカー「ジャイラス」買収をめぐり、買収交渉に携わったジャイラスの複数の元最高幹部が毎日新聞に対し、オリンパスが巨額報酬を支払った投資助言会社について「名前も聞いたことがなかった」と証言した。オリンパスの高山修一社長は8日、投資助言会社への支払い(当時の為替レート換算で660億円)を財テクの失敗で生じた損失穴埋めに流用したことを明らかにしたが、投資助言会社がジャイラス買収に関係していないとの証言で、裏付けられた形となった。

 オリンパスはジャイラス買収に絡み、日本の証券会社出身者が代表を務める米国のAXESとケイマン諸島のAXAMインベストメントに約660億円を支払った。両者が結んだ07年6月のM&A(企業の合併・買収)に向けた合意文書では、買収候補先として海外企業4社が記載されており、ジャイラスは08年2月に買収された。

 買収の経緯について、英国人の元ジャイラス最高幹部は匿名を条件に「オリンパスから取締役会に買収提案の書簡が届き、魅力的な買収額だったので交渉を始めることになった」と説明。そのうえで、この最高幹部は投資助言会社について、「AXESやAXAMという名前は聞いたこともなく驚きだ。オリンパスのアドバイザーとは接触したことも、電話を受けたこともない」と証言した。

 買収に伴いジャイラスの最高経営責任者(CEO)を退任したロイ・デービス氏も電子メールで、「AXESとAXAMという名前は先月の報道で初めて知った。投資会社の代表には会った記憶もない」と回答した。AXAMはオリンパスからの最終支払いが行われた3カ月後の10年6月に登録料未払いで会社登録を抹消されている。

 巨額報酬を内部告発してオリンパス社長を解任されたマイケル・ウッドフォード氏は、買収の目的は資金を流用することだったと指摘。同氏は医療機器の専門家で、買収交渉が行われた当時はオリンパスの欧州法人社長だったが、東京からの相談は一切なく、「なぜ買収するのか」と疑問に思っていたという。

毎日新聞 2011年11月9日 15時00分(最終更新 11月9日 20時28分)

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オリンパス:助言会社へ株で報酬 監査法人の反対押し切り

オリンパスの損失隠し問題で、08年の英医療機器メーカー「ジャイラス」の買収に伴う米投資助言会社への支払いの一部をめぐり、監査法人が現金で行うよう勧めたにもかかわらず、オリンパスがジャイラスの優先株による支払いを強行していたことが9日、分かった。オリンパスはその後、優先株を6億2000万ドル(当時の為替レート換算で約590億円)で買い戻しており、過去の損失穴埋め費用を確保するために、投資助言会社へ多額の資金を流す狙いがあったとみられる。

 毎日新聞が入手した内部資料などによると、オリンパスは投資助言会社に対し、ジャイラス買収の報酬の一部を、ジャイラスの新株予約権で支払う契約を結んでいた。しかし、オリンパスが予定していたジャイラスの再上場を取りやめたとして、投資助言会社は新株予約権に代わるものを求めたとしている。

 当時オリンパスを担当していた海外の監査法人は08年7月、「現金で清算するのが透明性の観点から最も望ましい」と助言。オリンパスは聞き入れず、「投資助言会社が『現金で受け取れば米国で課税が生じる』と反対している」などとして、約1億7700万ドル(同約184億円)の価値があるとする優先株による支払いを選択した。同9月、オリンパスは英領ケイマン諸島にある投資助言会社の関係会社に優先株を渡した。

 ところがその後、「ジャイラスを完全子会社化する」として、優先株を買い取ることを決定。ジャイラスの企業価値が向上したとして、買い取り額を発行時の3.5倍に設定。オリンパスは「投資助言会社が他者へ優先株を売却するのを防ぐため、高額で買い取った」と説明していたが、資金を流すためのからくりだったとみられる。

 投資助言会社の関係会社は資金を受け取った3カ月後、会社登録を抹消。投資助言会社も現在は実態がないとみられ、資金の流れが追いにくい両社に支払われた資金が、「飛ばし」で表面化しなかった損失の穴埋めに利用された可能性が高い。

 新株予約権発行や優先株買い取り額などの決定は、オリンパス側は菊川剛前会長兼社長、森久志前副社長ら一部の幹部で決められたとみられる。オリンパスの第三者委員会も経緯を把握しているもようで、全容解明を進めている。【竹地広憲】

毎日新聞 2011年11月10日 2時30分(最終更新 11月10日 2時48分)

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